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菊池川水系と緑川水系の分水界を地図に描く

公開: 2024年03月04日
更新: 2024年04月12日

熊本県の一級水系菊池川、国土交通省 によると幹川の流路延長は 71 km、流域面積はおよそ 996 km²。合志の段丘はフラットでトレースしがたい。
いっぽう緑川水系は幹川の流路延長が 76 km、流域面積はおよそ 1,100 km²。火成岩台地と熊本平野はフラットでトレースしがたい。

どうしても阿蘇に気を取られる地域。

マップ読図

不明瞭な部分は国交省の流域図を参考とした

先入観だが、合志や大津に降る雨の多くが玉名へ流れるとは思っていなかった。
熊本で水害といえば白川のイメージがあるが、菊池川水系と緑川水系にはさまれた白川の流域は阿蘇カルデラを立野で出たあとは意外に小さく、流域面積は 480 km² にすぎない。狭窄部に事業完了間近、流水型の立野ダムの制水効果は大きいと思う。
※追記、立野ダム工事事務所は3月27日に建設事業の完了をアナウンスし、国土地理院地図も更新された。

昭和6年部分修正の陸地測量部5万図「隈府」から一部、Stanford Digital Repository

5万図隈府から一部、立野周辺

まだ長大な道路橋梁がなかったころ、戸下温泉はのちに立野ダム建設のため廃湯。
黒川第一発電所とそれに至る導水路がすでに描かれているが、例の地震で損壊。九電は2026年度完成を目標に 復旧計画 を策定している。
南阿蘇鉄道も地震を経てトンネルが明かりになるなど線形が変更された。

なお 熊本河川国道事務所 によると、むかし白川と坪井川は現在の熊本市役所付近で合流していたが加藤清正が熊本城を築くにあたり河道を付け替え分離したとあり、ことほどさように白川集水域の不自然な先細りが腑に落ちる。

豊富な地下水

日本地下水学会の 地域地下水情報データベース によると、阿蘇西麓について

...平坦な台地は白川,菊池川などによって開析され,菊池台地,詫麻台地,植木台地などに分れている。いずれも河川との比高が数十 m もしくはこれを超す台地であるため,かつては生産性の低い無水畑地帯として有名であった...
...西麓台地全体で 3,000 本以上の深井戸が掘削され,ピーク時の日揚水量は 200 万 m³ 以上に及んでいる

熊本空港 (1971年供用開始) は、その平坦な火砕流台地を巧みに利用して設計されている。空港に降る雨は地形からしておそらく緑川水系へ流出させているのだろう (参考までに、分水界をまたいで造成された成田空港はすべて利根川水系へ排水する設計なのだそうだ *)。

また地下の帯水は阿蘇の恩恵であると

山鹿,菊池,菊南および戸下などの温泉群と,八景水谷,水前寺,江津,木柑子,浮島および潮井などの湧泉群が断層線上に並んで分布しており,これらの温泉や湧泉は断層線に沿う亀裂を通して下方から供給されているものと考えられる

少しまぎらわしい記述だが、地下水盆は 900 km² に及ぶとのこと。布田川など断層の存在は悪いことばかりではない。
ただし、昭和のころから鹿児島本線より西側の沿海部、有明粘土層の厚い範囲で地盤沈下が確認されているようだ。

地下水に恵まれた嘉島町は全国でただひとつ上水道の (必要が) ない町だったが、今は台地に造成されたニュータウンに給水するため簡易水道を整備したとのこと。

環境省の 熊本県の代表的な湧水 によると、健軍水源地は熊本市最大の水道水源地で市全体の4分の1をまかなうとある。11本の井戸のうち7本が自噴、5号井は日量約 15,000 トンの地下水が湧き出すらしい。羨ましい話だ。自衛隊の駐屯地が健軍にあるのも納得。

ダムは少ない。これまた工業用水、家庭用水、灌漑用水ともダムを必要としない恵まれた環境でもあることの証しか。
もともと江戸時代から溜め池だった大切畑ダムは空港に隣接する深迫ダムにも送水していたようだが、2016年に地震で損傷。断層を避け堤体を南側に作り直しているようで、堤高 29.0 m、堤頂長 237.7 m に変わるようだ。
ついでに深迫ダムを航空写真で見ると、漏水ないし浸透を防ぐためかアスファルトフェイシングらしき施工がされている。

洪積層の発達が貧弱な福岡県大牟田市は水に恵まれないため、菊池川の白石堰から市内ありあけ浄水場まで導水しているとのこと (地理院地形図に暗渠の記載はされていない)。
現状では白石頭首工から大牟田市水道へ 0.232 m³ / s、荒尾市水道へ 0.093 m³ / s、熊本県工業用水として 0.421 m³ / s、福岡県工業用水として 0.925 m³ / s などといった水利使用となっているもよう。

分水界を越えたよその自治体の需要に応える余裕もあるわけだ。肥後は火の国というけれど水の国でもあるなあ。

重文から国宝に格上げされた通潤橋は通潤用水という疏水の一部。注目されやすいのは土木構造物としてのアーチ橋だが、主役は水。その南側にある緑川右岸の旧白糸村の台地を潤しているのがわかる。地形を見ると、五老ヶ滝川の下刻が急になる直前に架けてある。
美里町と山都町には、古い小隧道や石造の橋があちこちにある。甲佐岳の周辺は肥後変成帯げな。

以下も参照を

小学校の修学旅行で阿蘇へ行った当時は仙酔峡のロープウェイがあったが、今はない。
阿蘇と雲仙の中間にある金峰山は古いカルデラ式火山、20代のころ西日本新聞記者の友人と山頂へ行ったが、何も憶えてないや。

* 杉野信吾「新空港建設のアウトライン 7.1 新東京国際空港」土木学会誌 第59巻第3号 (1974年3月)

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