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姫川水系の分水界を描くマップ

公開日: 2023年2月2日

長野県白馬村から新潟県糸魚川市へ北流する姫川。源流は白馬村の南端付近ということになっている。その分水界のすぐ南に青木湖、中綱湖と木崎湖のいわゆる仁科三湖があって遠く信濃川へ流れる

もともと青木湖は姫川の上流部だったが、現在の白馬さのさかスキー場付近の上部山塊が大規模に崩壊したことで堰き止められて湖となり、流れは南へ向いたとする説が有力だといわれている。 のこと。もともと姫川水系は山体崩壊や地すべりの多い地域で南神城駅の西にも不安定そうな二重山稜がある。青木湖は神城断層もとおる。
青木湖の水面標高は 822 m、最大水深が 58 m、つまり最深部の海抜は約 764 m ということになる。現状の姫川源流域の標高は約 740 m 程度なので、納得がいく。大糸線はパーミル勾配が大きくならぬよう西の山裾を巻いている。

野良の学習者として、堰き止めの前は何処が分水界だったのだろう? という疑問がある。
木崎湖がもとより信濃川水系農具川の上流であることは間違いないだろうし、この区間の農具川が鹿島川扇状地によって東へ押されているのは誰の目にも分かる。
昔の分水界は、青木湖と中綱湖の間か、中綱湖と木崎湖の間か? 西から伸びる尾根や東から流れ込む支川がヒントになる気もするが、長いことまったく分からなかった。
青木湖と中綱湖をつなぐ区間の農具川は、現状では一部が暗渠となり人工的な疏水にしか見えない。昔は自然河川だったのかどうかも分からない。なお中綱湖の水面標高は 815 m、木崎湖の水面標高は 764 m とのこと。

「青木湖と佐野坂丘陵の成り立ち(予報)」太田勝一、市立大町山岳博物館 研究紀要 第6号(2021)によると

中綱湖~青木湖間の陸地と佐野坂丘陵の地下に,かつての姫川の河道が伏在する可能性がある

また大町山岳博物館の広報誌『山と博物館』第67巻第2号(2022年)p.5 によると、中綱湖は西からの地すべりにより「かつての姫川が堰き止められて出来たと考えられます」としている。
そうであれば、1089.9 m 三角点がある尾根の先端あたりが谷中分水界のていをなしていたのかしら?

国土地理院には湖沼図があるが、長野県で公開されているのは諏訪湖と野尻湖のみ。青木湖も調査が実施されたら見てみたいものだ。

なお姫川の流域には砂防や発電用の堰堤はたくさんあるが堤高 15 m 以上のダムはひとつもない。すぐ堆砂するから無理なのだろう。

関係ないが私は高所恐怖症だけでなく湖水も苦手で、仁科三湖のなかで青木湖がいちばん怖い。いまの国道148号は新しいバイパスだが、昭和の昔は湖畔に沿ってイヤだった。また青木湖は映画『犬神家の一族』で例のシーンのロケに使われたことでも有名。

※2月4日追記:『山と博物館』第3巻第4号(1958年4月)に長沢欽平による「山や里のことなど」という小文があり、この中に

......神社の所在部落を鹿島と呼び......今も戸数の制限があり分家は他へ転出せねばならないならわしが行われている......
......分水嶺として佐野坂があり北は姫川が日本海に流れるが昔は厭川(いとい川)といい高落差の川、荒れ狂う川、いやな川のたとえであった。今は川尻にわずかに糸魚川の地名を残すに過ぎない

とあった。知らなかった。追記おしまい。

おまけ。
麓からの眺望という点で、松本市から直近に見える常念岳のピラミッド型の山容は立派だが、ほかの表銀座は絵になりにくい。その点で爺ヶ岳から白馬岳に連なる後立山連峰は立派だ。
この山脈の展望台としては、大町市の鷹狩山や白馬村にある国道406号の白沢峠が有名だと思う。
個人的には長野県道497号の美麻八坂線、青具の大藤から小藤にかけて見える眺望が好き。とくに晩秋の三段染めの頃は、絶景と言ってよいと思う(天候に恵まれたら、の話)。原田泰治が描くような素晴らしい画を見ることができる。昭和の時代は茅葺の素朴な住宅が多く残っていて完璧な絵画だった。

上記の分水界は 日本の主要な分水嶺分水界のマップ にも収納している。
この地域については以下のように

覚え書きしてきた。