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北アルプス北部の古い地形図

公開日: 2021年6月29日

「山の神」というと 山ヤの恐妻 山に宿る神様なので、地名やバス停の名称などで全国のあちこちに見かける。一般には女神様なのだそうで、男子としてはゼヒ謁見したいものだ。
長野県の戸隠には神様がいて、栂池周辺には「神ノ田圃」と「山ノ神」がある。同時に鬼無里もあり、青鬼や鬼女紅葉、鬼が築いたという伝説の一夜山があり、天狗ノ庭もある。この地域は昔から神仏への信仰が強いという話も聞く (この地域に限ったことじゃないが)。

昔の白馬岳周辺

『白馬岳地域の地質』(中野ほか、産業技術総合研究所地質調査総合センター、2002) に、次のくだりがあった。

蓮華温泉の南東に,"千国揚尾根"と呼ばれる尾根がある.小谷村千国から稗田山の南を通過し山ノ神を経て,千国揚尾根のフスブリ山の南 ("千国揚") から蓮華温泉へ下る道があり,かつては蓮華温泉や蓮華鉱山まで物資が運搬され,人夫が通行していた

大正元年測図昭和6年修正5万図「白馬嶽」参謀本部 Stanford Digital Repository の一部。なるほど「千國揚」があり、山ノ神には神祠の記号がある (現在もピークの名称じゃない)。乗鞍沢右岸の尾根に小径があったようだ。「製錬所趾」の注記もある。

大正元年測図昭和6年修正5万図「白馬嶽」

現行の地形図には山ノ神に神祠の符号がない。千国揚も記載されていない。また古い地図には乗鞍岳の三角点北側の凹部に湖沼が記載されているが、現在は存在していない。画像では、ただのガレに見える。断層崖が風化で縁から崩れ消滅したのだろうか?

風吹大池の北東、硫黄が臭いから「クセエ沢」という率直な (しかし風情はない) 名前の沢もある。私は嫌いじゃないが、地形図には明記されていない。
ガスった天狗原で方向感覚を失ったことがあるので、ひょっとすると私は女神様に嫌われるタイプなのかもしれない。

鬼無里の伝説

長野市鬼無里観光振興会 公式サイト に次の記述がある。

戸隠との境に近い中田地区の十二神社には、「舟繋ぎの樹」と呼ばれるケヤキの木があります。鬼無里は昔、湖の底にあり、十二神社の南西、直線距離で7.5キロメートル離れた飯縄神社 (現小川村飯縄山頂) とを結ぶ渡し船を繋いでいたそうです。ある時、虫倉山と新倉山の間で山崩れがあり、現在の国道406号、銚子口トンネルのあたりから湖の水が流れ出て、湖底=現在の鬼無里が姿をあらわし「水無瀬」と呼ばれるようになりました

この伝承で港だったという十二神社の標高が約 950 m、妄想を膨らませたら次のような感じ。

鬼無里湖 (仮想)

「港だった」ことはないだろうけれど、湖だったという説は、地質図を見ても、まったくの絵空事ではないのかなぁ?

古いアルバムから再掲。
四川省の甘孜藏族自治州にある海螺溝の第3キャンプから、ミニヤコンカの衛星峰である金銀山(6,410 m)。1991年2月に撮影した。

ミニヤコンカ海螺溝

ここは標高 3,000 m に満たないが、この直上に氷河の先端や「奇跡の生還」の場所がある。谷を下れば第2キャンプに温泉。
氷河と温泉を同時に楽しめたのは、後にも先にもここだけ。勇気と感動をもらいました (おおウソ)
チベット世界に女神様がいるかどうかは、知らん。