富士川流域の分水界をできるだけ描いてみる

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published: 2022-08-21, updated: 2022-09-10 by Campo Salado

昭和3年測図陸地測量部2万5千図「身延」Stanford Digital Repository から一部。現在は3連の霞堤で防禦されている左岸の帯金地区、当時は築堤の途上にあった模様。右岸には廃止された隧道があり頽岩の記載が連続している。もっと昔の流路を村の境界線から想像できる。

昭和3年2万5千図「身延」から

富士川は幹川流路延長 128 km の一級河川。笛吹川合流点より上流の名称は釜無川。
中央本線に乗っても中央道を運転しても、甲府盆地は意外に時間がかかる。勾配が続きルートも直線的ではないからだろう。

分水界のマップ

国交省関東地方整備局による流域図では、本栖湖は流域に含まずその南から富士山頂、愛鷹山を経て沼川を包含し流域面積は 3,990 km2 となっている。1974(昭和49)年に星山放水路が開削されたのを機に、潤井川を含む沼川水系全域が富士川水系に編入されたらしい。
これは行政上の、あるいは河川法上での管轄の線引きだろうから、分水界という視点で倣うのはどうかと思った。
河口湖は嘯治水トンネルなど放水路があり相模川水系に属している。西湖には河口湖への導水路があるが国交省の線引きでは相模川の流域に含まれていない。本栖湖に流出河川はないが、富士川支流の反木川沿いにある日本軽金属の本栖発電所へ暗渠で導水されている。
(河川行政上では放水路という開渠と導水路という暗渠で概念が異なることを示唆するものだろうか?)

西側3湖と富士の山体に分水の線を引くことは極めて困難というか、そもそも意味のあることとは思われない。単純に等高線を追えば本栖湖の南東、竜ヶ岳と大室山を結ぶあたりが最も高いのだが、青木ヶ原の北にある王岳でトレースは切った。田貫湖(狸沼)や白糸の滝は明白に富士川水系だけれども。
八ヶ岳の東麓は信濃川流域との、西麓は天竜川流域との分水界にあたる。やはり火山でいずれも線引きはナンセンスだが疏水は無視し大雑把にトレースした。ファジーな流域はほんとうに困る。

甲府の年間降水量平年値は 1160.7 mm で少ないが甲斐駒や白根三山や大菩薩嶺あたりも寡雨という意味じゃなくて土砂災害が発生しやすい地域。富士川は最上川や球磨川とともに日本三大急流、国の直轄管理区間 85 km の勾配は 1/240、幹川の源流は POI 釜無川本谷 とのこと。

POI 白鳥山の東斜面 は1707年の宝永東南海地震で崩壊、1854年の安政東海地震でも崩壊、富士川を閉塞させている。
宝永東南海地震では POI 湯之奥 でも下部川が閉塞している。
1900年には POI 大柳川 で大規模な崩壊が発生して、やはり湛水している。その他もろもろ。

POI 雨畑ダム の問題が象徴的だと思うが、上流域から中流域にかけ特に糸静線に沿って崩壊地だらけだから、地図を読んでも堆砂量の多さは想像しやすい。
釜無川は、渇水の場合には瀬切れが起きるし豪雨の場合には流勢が大きいため局所的に洗掘が生じるとのことで、厄介な川だ。
一般に扇状地は漏水が大きく平時の流量は少ないが豪雨など有事の際には豹変する、そのギャップの大きさも危険なのだろうと思う。
1959(昭和34)年の台風で富士川流域は大災害を被り、中でも釜無川右支川(大武川、小武川、尾白川、神宮川、流川、早川)は崩壊による土砂流出と土石流による甚大な被害を受けている。小武川渓谷は右支のゴア沢も含め河床標高が相対的に冗長に高くて谷底堆積が幅広だ(東隣にある鷹ノ田集落跡の地すべり地形への侵食が急峻なのとは対照的。未来のゴア沢は首なしだろうか?)

明治21年測図昭和4年修正参謀本部2万5千図「韮崎」Stanford Digital Repository から一部

2万5千図「韮崎」から

霞堤やら天井川やら徳島堰疏水やら、信玄は謙信や水だけじゃなく土砂とも戦ったのだな、という感じ。
当時の国鉄中央本線は、火山岩屑流原の丘陵を登るにあたってスイッチバックを用いている。

身延線が波高島から鰍沢の狭窄部まで左岸の川沿いを回避しているのは理由のあることなのだろう。早川の攻撃部には昔も今も道がない。その点、国道52号は怖い箇所がいくつかあるように思う。
中部横断自動車道が開通したので、身延線は西富士宮~鰍沢口で乗降客数がさらに減少しJR東海にとって重荷となることだろう。日蓮宗身延山や七面山も、御嶽山と同様に参拝者が高齢化し減少しているはずだ。
雁堤(かりがねづつみ)と河口の間にある東海道本線の富士川橋梁は1982(昭和57)年8月の台風10号による洪水でトラス桁2連を流失している。

中央自動車道の当初ルート案は富士吉田から身延町を経て南アルプスを貫通するというリニアの思想に近いものだった。
最終的に諏訪を廻る現行のルートになったが、これが甲府盆地を南へ遠回りしているのは金丸信のチカラなどが影響しているのだろうか?

リニア中央新幹線の建設にともない早川・芦安連絡道路が建設されているが、完成まで何年かかることだろう?
問題になっている大井川の水は一部が田代ダムで取水され暗渠で分水界を超え、富士川流域の田代川第二発電所へ導水されている。

東京電力の上日川ダムは、東隣の相模川水系にある葛野川ダムと兄弟。相互に水を往来させ地下で揚水発電している。いずれも1999年竣工で発電のみを目的とするダムだが、水害が予想される場合には治水協定に基づいて事前放流を実施することになっている。

甲府盆地の北に昭和初期の灌漑用アースダムがいくつかあるが、丸山溜池(千代田湖、1936)はチカラワザだと思う。よくもまあ。

本栖湖のことは「本栖湖の水と生活」で触れた。「御勅使川の砂防と治水」ならびに「山梨県早川町の雨畑川」も参照を。
日本の主要な分水嶺分水界のマップ」のまとめもどうぞ。

参考:『歴史的大規模土砂災害地点を歩く』コラム14 1707年の宝永地震と富士川・下部湯之奥の天然ダムコラム34 富士川支流・大柳川における天然ダムの形成と災害対策およびコラム49 富士川右支小武川・ドンドコ沢の巨大深層崩壊と岩石なだれ(887)ほか

私は蕎麦が大好きだ(特に開田と美麻)が、ほうとう(山梨全域)も好きだ。これら日常食に高飛車な価格設定をする店は嫌い。

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余談。
今でこそ私は身長 169 cm だが中学入学時には 133 cm、高校入学時には 153 cm しかないチビだったので少し屈折している。
しかも細身で大学生のころは B88 - W58 という峰不二子みたいなスペックだったので、ズボンを買うのに苦労した。胴囲を詰めて直してもらう必要があった。拒食症などの病気ではなく、どんなに食べても太らない太れない恰幅のない体形・体質だから、しかたなかった。
忌憚なく率直な「太りたい」という心情を吐露すれば、とくに御婦人方から叱られた。マイノリティはマジョリティから不条理に叩かれるという、よくある例だ。
今は筋肉が落ち腹が弛んだうえ Mens でもウエスト 70 cm からラインナップを揃えるユニクロがあるので、助かっている。

世の中、長身で痩せたい人ばかりじゃない。体質や感情などに「標準」などない。コンプレックスのほうが多いのだ。
誰でも「自己正当化」のバイアスは掛かりやすいものだが、思考や行動も含め「自己標準化」は誤りだ。
どうも最近は「自分が標準」とでも言うような、利己的で思慮に欠けた振る舞いをする人物が増えている気がする。

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