未成の広浜鉄道今福線

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公開日:2021-02-12 更新日:2021-02-12

広浜鉄道の「広浜」は広島と浜田。1933(昭和8)年、山陰本線の下府駅から石見今福駅までが着工された。しかし、工事がほぼ完了した1940(昭和15)年、太平洋戦争のため中断。
戦後、それまでの路線とは別の新線が浜田駅を起点に計画され一部着工されたが、国鉄の赤字などで工事は再び頓挫。結局そのまま列車が走ることはなかった。

下府駅から石見今福駅までの路線図

未成区間は、地理院の60年代、70年代空中写真でトンネルを除き確認できるので、POI 下府駅から POI 石見今福駅まで、ざっくりトレースを加えてみる。

1938(昭和13)年12月発行の『土木學會誌』第24巻第12号に「今福線下府付近砂丘切取工事に就て」という岡野幸三郎氏(鉄道省米子建設事務所技手)の報告がある。
これによると、下府駅から 400m ほど進んだ上ノ浜地区は POI 砂丘なのだそうだ。

砂丘の切取並に砂丘の資料を用ひたる築堤の工法は其の施工個所少なく地質的にも施工的にも尚研究の余地多く信頼すべき工法も見出されざるを以て官房研究所に於て土質試験を行ひ其の抗剪強度其の他の實験値を参考として切取の限界勾配を決定せんと試みた。
元来砂は全く乾いて居る時は團子に丸め得ないが少し水で濕めすと容易に團子に慥へ得る,併し更に水を加へると流れて出來なくなる(中略)
抗剪強度が最大値を示すのは含水量 10~15% 内であることは此の實験で判明した。従つて切取を安定に保ち得るためには此の砂丘層内には絶えず一定量 12~13% の水分を含ませて置くことが必要である

隧道や橋梁は全国各地にあるが、砂丘の土木はたしかに聞かない。ここでは、土羽踏工を施工したとのことで「全体的に見れば成績よく砂丘地の法面保護工としては最も適當の工法なりと思はる」。この箇所は現在、車道に転用されている。ストリートビューで見ると、盛土から切土に変わるところ。
土木学会は、2008(平成20)年に「今福線のコンクリートアーチ橋群」として一部の遺構を選奨土木遺産に認定している。

未完成に終わった鉄道のコンクリートアーチ橋が一群として現存し、山間の景観に溶け込みながら、悲運な歴史を伝えている

せっかくなら、上記の砂丘切取も見たいものだ。
今年11月には、未成線の残る地域が集う「全国未成線サミット」が浜田市で開かれるとのこと。

こちらも参照を:五新線の地図美幸線の未成区間土木遺産一覧マップ廃止された鉄道路線と駅のマップ
出典=土木学会

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