鹿児島県の一級水系、肝属川の分水界をわかりやすくトレース。
とはいえ、私たち生活者にとっては河川法の上での一級か二級かの区別はあまり関係なく、管理者がどこまで国か県かといった程度。
肝属川の水系、国土交通省 によると幹川の流路延長は 34 km、流域面積は約 485 km²。山地部が花崗岩、四万十層群で形成され、中下流部の大部分は姶良カルデラ等から噴出した入戸火砕流等による灰白色のシラスが分布するとのこと。有名な笠野原台地がやたらと目立つが、肝属川右岸もまたシラス台地であることも肝。キモツキだけに
肝属川は1976 (昭和51) 年6月に洪水で鹿屋市街に大きな被害を与え、これを契機に国が鹿屋分水路を2000年に完成させた。トンネルは延長 1,609 m で地下水位下のシラスを掘削したはじめての大断面トンネルとのこと (一般社団法人九州地方計画協会)。
日本地下水学会 によると
大隅半島には天恵の豊富な湧水がある。水文地質図に示した範囲内の湧水の総数は 1,592 ヵ所で,湧出量の合計は 43.9 m³ / s に達する...
固結しらすは,しらすよりかなり締密であるが,粒子間隙に乏しく,また,溶結凝灰岩のようにオープンクラックが発達するわけでもないため難透水性であり,賦圧層の役割を果たす
阿多や加久藤など層によって微細な相違があるらしい。
畜産が盛んな地域だが、その影響でかつては肝属川の水質も良くなかったとのこと。現在は畜産農業に係る水質汚濁防止法による排水基準の見直しが進んでいるようだ。
鹿児島県/桜島降灰量観測結果 によると、桜島噴火口より20km以遠の29か所の観測所のうち、2023年の降灰量が最も多かったのが大隅 (曽於市)、次いで鹿屋となっている。季節による傾向もあるだろうが、ありていに考えて桜島の東に位置する大隅側がより降灰にさいなまれ堆積も多いのだろうと思う。集水域が広い肝属川と菱田川さらに大淀川は相当量の火山灰を運搬してきたのだろうとも思う。
シラスを下刻し開削しても河口に州を形成しないのはシラスが微細で軽量だから、ということなのかなぁ? 石油備蓄基地を造るくらい海は浅いのだろうし、志布志湾の潮流が強く速いとも思えないし、縄文海進の内海を埋めたのだろうか? 霧島の山塊から流下する天降川はデルタだけれども。
高隈山地の大箆柄岳 (おおのがらだけ) 周辺の非対称な尾根はホルンフェルス。肝属山地の甫与志岳から荒西山にかけ NE - SW のリニアメントが目立つが「南大隅花崗岩で形成され基盤岩中の断層・節理・岩脈の発達する方向を示唆するものと考えられる」とある (鹿児島県「大隅南部の地質」PDF)。
Stanford Digital Repository から陸地測量部明治35年測図昭和2年鉄道補入5万図「鹿屋」
のちに太平洋戦争で飛行場が三つ作られ出撃の拠点になった。これはわりと知られた話だと思う。
肝属川の下流域は自在に蛇行している。現在の市町の境界線からも旧河道を想像しやすい。
気象庁のアメダス No.88392 吉ケ別府は「ヨシガベップ」だが、この古い地図では「ヨシガビュー」となっている。またシラス台地にはやたら「堀」の字が多いが「ホイ」や「ボイ」とカナが振られている。笠野原は「カサンバイ」と振られており、その名は笠野薬師に由来するらしい。さらに「吾平」も「姶良」も「アイラ」で、薩摩も大隅もおしなべて読みの難度が高い。
大隅鉄道が記載されているが、これは1935 (昭和10) 年に国鉄の古江線となり、大隅線と改称されたのち1987 (昭和62) 年に廃止。
以下も参照を