広島県太田川の流域をトレースしてマップに描く

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published: 2022-07-29, updated: 2022-07-29 by Campo Salado

飛行機で中国地方の上空を舞っていても分かりにくいが、山陽新幹線の車窓からの眺めは花崗岩まみれ。

明治27年測図昭和7年部分修正参謀本部・陸地測量部5万図「廣島」Stanford Digital Repository から一部。太田川放水路(1967(昭和42)年に完成)が出来るはるか前の広島市。

5万図「廣島」から

これだけの三角州を造るくらい河水が運搬した土砂の量は多かったわけだし、流域に供給源があるということだし、働き者の川だ。

分水界のマップ

太田川は幹川流路延長 103 km、流域面積 1,710 km2 の一級河川。三次から山口県境までは中央分水嶺にあたり、陰陽の境界でもある。
幹川の源流は POI 冠山 とのこと。冠山、冠嶽や冠岳という名の山岳は全国各地にあるのでまぎらわしい。

黄色はダム、水色はアメダス。明当溜池と大迫以外のダムは「治水協定に基づく事前放流」を実施することになっている。
広島の年間降水量平年値は 1572.2 mm で全国的に見れば少雨だが、瀬戸内・山陽地方としては多いほう。

下流デルタ域を中心に洪水被害は多い。紫色は2014(平成26)年8月に土砂災害を被った主な箇所だがこれは河川というより土壌の問題、花崗岩が風化して脆くなったマサ土が多い地域なので他より相対的に少ない雨量でもリスクは高いと捉えるべきなのだろう(もちろんマサ土以外でも崩れるのだろうが)。
1988(昭和63)年7月豪雨でも、安芸太田町の POI 江河内地区 などで土石流により死者・行方不明者15人を数えている ※1。このあたり、沖積錐が左右両岸に発達している。土砂供給の多さを示唆するものなのだろう。
そのさらに上流、三段峡付近の穿入蛇行は「攻撃部と滑走部の谷壁斜面がほぼ等傾斜で対称的、生育蛇行というより掘削蛇行に近く、河系模様は地質構造を反映している」※2 そうだ。なるほど。確かに中国・四国地方に特徴的なリニアメントを割る谷は直交、直角状のところが多い。

源流に近い立岩ダム(PG、堤高 67.4 m)の堤体のすぐ西(左岸)は押ヶ垰の断層突起と鞍部だろうか? 活断層ではないようだが。

大正14年測図参謀本部2万5千図「祇園」から、安佐南区緑井の周辺

2万5千図「祇園」から

現在では宅地が山の中腹まで造成され拡大している。猛烈な変わりよう。
この地域は大字も小字もかなり変わってしまっている。

江の川水系の分水界」および「アメダス一覧マップ」もあわせて参照を。
これまで描いた分水界は「日本の主要な分水嶺分水界のマップ」にまとめてある。

※1「昭和63年7月豪雨災害」(広島県 土木建築局 砂防課)
※2『建設技術者のための地形図読図入門 第3巻』(鈴木隆介、古今書院)

余談

広島といえば牡蠣、カキは「Rのない月に食うな」と言われる。つまり May から August は時季じゃない(※北半球に限る)
エサは植物プランクトンらしいが、花崗岩質土壌から流れ来る淡水が及ぼす影響はあるのかな?

日本が弱くなったとかダメになったとか言われるけれども、もしそれが本当ならば、原因のひとつは偏差値じゃないですかね? 尺度規矩や指標は大切だと思うが、壮大なカンチガイを惹起した昭和時代の大失敗だと私は思っている。
文系か理系かというカテゴライズもダメだと思う。いずれかに帰属しようとしたら、それは人生の可能性の50%を放棄するに等しい。子供には無用の分水嶺だとも私は考えている。

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