佐賀県の一級水系、松浦川の分水界をわかりやすくトレース。
松浦川の水系、国土交通省 によると流域は唐津市、伊万里市と武雄市にまたがり、幹川の流路延長は 47 km、流域面積は約 446 km²。
唐津市の厳木 (きゅうらぎ) などは元産炭地、幕末から明治期は河口まで石炭の舟運に利用されていたとのこと。その由来か競艇場もある。
次の地図中の自然災害伝承碑は2024年5月現在
下流左岸の東松浦半島には溶岩台地が広がる。河口近くに後背湿地と自然堤防、黒髪山は流紋岩の岩峰。
マップ中に示したダムのほかにも灌漑用の古いアースダム (溜め池) がたくさんある。
流域の西側になるが、伊万里の人形石山の東斜面で1951 (昭和26) 年と1957 (昭和32) 年に大規模な地すべりが発生。
受け盤で発生したという点でめずらしいようだ。第三紀層の上部に玄武岩が載っている北松型というらしい。
国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」から災害発生前の USA M663 - 4 (1947年11月21日) を見てみる
乙女地区と西大久保地区の棚田や多数の家屋を押し流し埋めただけでなく佐代川の河道も東への付け替えを強いたようだ。これらがきっかけとなって1958年に地すべり等防止法が公布施行された (この法は砂防法を補完する役割もあったらしい)。
(参照:「昭和26年に発生した大災害の記憶を伝える乙女地区地すべり防止事業」山口広幸, 水利科学 No.350, 2016 など)
元は伊万里焼と総称された陶磁器で有名な有田町と波佐見町、前者は佐賀県西松浦郡、後者は長崎県東彼杵郡 (ひがしそのぎぐん)。
原発がある玄海町は佐賀県東松浦郡。松浦市と北松浦郡佐々町は長崎県。離島の新上五島町は長崎県南松浦郡、小値賀町は北松浦郡。
自治体の合併の果て現在の「松浦」地名は東西南北の位置関係がまぎらわしく常に混乱するので、頭を整理するためメモ。3歩あるいたら忘れるけれども。
有田や波佐見の陶磁器は鍋島由来の高貴な官製がルーツ、いっぽう福岡県直方市発祥の高取焼の流れを汲む東峰村の小石原焼や大分県日田市の小鹿田 (おんた) 焼は庶民の素朴な生活道具のための民陶とのこと。いずれも通称や小字で「皿山」があり、上野 (あがの) や三養基、天草や薩摩川内にも皿山地名と共に窯がある (あった) から、陶器にまつわる九州ならではの呼称なのだと思う (陶土に適した地質が何かは知らない)。
日田の小鹿田は柳宗悦の著作『手仕事の日本』で紹介され有名だが、2017年と2023年に台風被害が報じられていた。
これで分水界シリーズはひとまずおしまい。
まとめ「日本の主要な分水嶺、主要河川の分水界を描くマップ」も参照を。