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地図の経緯と空中写真のこと

公開日: 2025年6月8日

『土木学会誌』第60巻第7号 (昭和50 (1975) 年6月発行) に「最近における地図の話題」(尾崎幸男、建設省国土地理院地図管理部長) という論稿があった。発刊から50年を経て今月一般に公開された PDF だが、興味深かった。

国連地図会議での報告によると,世界の陸地面積の約75%については現在なお縮尺25万分の1より大きい地図は存在しないという。町の本屋で5万分の1でも2万5千分の1でもその他の地図でも容易に入手できる日本ではちょっと信じがたいくらいであるが,これが今なお世界の実情であり,今後日本の国際協力が期待される分野でもある

さらに

各国での地図は,その製作・購入のスタイルから次の3種に大別される。
1 国の機関により発行されている地図
2 民間業者発行の地図 (有償および無償)
3 特定の目的のため発注・製作された地図
東側諸国や新興国などでは1~3の地図の入手は皆非常に困難なばかりか,法律によってその所持を禁止されている場合すらある...
日本の地図事情の特徴といえば,上記3種の地図類がいずれも容易に入手利用できることである。これは,世界広しといえども他にほとんど類例がない

4月に「国土地理院の地形図、八十里越」でも書いたが、地図の機密性というのは半世紀を経た現在でも一部の国や地域においては変わっていないのではなかろうか?

investment for maps

1ドル360円に時代を感じさせる。

さらに「国土情報整備事業」が昭和49年度から実施されている、とある。これにはカラー空中写真 (全国) の撮影が含まれ、

今度の計画は全国平野部約14万5000 km² を縮尺8000分の1,残りの約21万6000 km² を縮尺1万分の1~1万5000分の1のカラー空中写真で撮影する。このような大規模なカラー空中写真の撮影事業は,世界でも最初のことである

現在地理院から提供されている1974年~1978年の空中写真タイルが、その成果なのだろう

ほかに土地利用現況図、メッシュデータやリモートセンシングなどへの取り組みが紹介されており、技術の進化の経緯が理解できる。地図は人智の蓄積による成果物なのだということも再認識できる。
昭文社やワラヂヤ、ゼンリンなどの出版社やアジア航測、国際航業やパスコなど航空測量大手にも日本の地図の進化に大きな貢献があったのは言を俟たないと思う (私はこれら業界のステークホルダーではないが)。

当時と劇的に異なるのは人工衛星による観測だが、デジタル技術の進化にともない従前のアナログなプロセスは軽視されていくのだろう。「足で稼ぐ」という基本も等閑になっていくのだろう。

同誌67ページから

マークは語る

社章やロゴマークなどのデザインも時代を経て進化するものだね。昭和の意匠には味わいがある。