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熱海市伊豆山の土石流災害

公開: 2021年07月04日, 更新: 2023年05月05日 by ちずぞう

昨日7月3日、土石流が発生したところ。東海道新幹線の明かり区間がある(しかも盛土に架道橋1つだけ)にもかかわらず、また土砂​災害警戒区域に指定されているにもかかわらず、砂防堰堤が地形図に見当たらない。
※7/5修正:逢初川起点に1基存在していた。1999(平成11)年度竣工、堤高 10.0 m、堤長 43.0 m、施設効果量合計 4,200 m³、捕捉量 4,000 m³、発生抑制量 200 m³ とのこと。

マップで見る

赤い色の線は、地形図上の等高線を追って逢初川の分水界をおおまかに示したもの。谷が埋められた現状と一部異なる。

※7/7追加:地理院画像タイル「正射画像 熱海伊豆山地区(7/6撮影)」を加えた。地図の全画面表示ボタンも加えた。
※7/9追記:アメダス臨時観測所「熱海伊豆山」が7日夕より運用開始(アメダス降水量と気温の一覧マップも参照を)。

この地域の地質について「国鉄新幹線泉越ずい道の地質と膨張性岩石について」(吉川恵也、応用地質5巻4号、1964)によると

泉越ずい道は湯河原火山の東縁部に位置し......貫く山体は解析が進み,最大土被り400 M 余り,伊豆山-七尾の谷は広く,河床堆積物が広く堆積し,岩盤はまったく現れていない。谷は浅いが,いずれも緩傾斜で,流水は常時非常に少ない

流水の少なさが仇になったとも言えるのだろうか。

吉川恵也「国鉄新幹線泉越ずい道の地質と膨張性岩石について」

伊豆山の付近は温泉余土帯ではなく、熱水変質もないらしい。

93 K 920 M は岩脈があり,以西,軽石質凝灰岩となる。酸性,淡灰色で3~5 cm の軽石粒を含む安山岩及び,閃緑岩の礫を僅か含む,これを貫いて,石英安山岩が現われるが,風化著しく,節理細かく,淡灰色潜晶質である

「93 K 920 M は岩脈があり」とは、距離を計算すると市立伊豆山小学校の直下にあたる。
「風化著しく,節理細かく」の地質が逢初川の上流にも及ぶのか否か。

東に並走する在来線の同名トンネルでも、中央付近は温泉余土でたいへんだったようだ(土木學會誌20巻2号「熱海線泉越隧道改築工事」1934)。また宇佐美の温泉余土については、少し前にふれた

明治18年測図昭和8年修正2万5千分の1「熱海」Stanford Digital Repository の一部。開発が及んでない昔の伊豆山。
集落の住宅は逢初川の左岸に集中している。右岸が疎らなのは何か理由があったのだろうか。

明治18年測図昭和8年修正熱海

参考までに、関東大震災の2年後、1925(大正14)年の雑誌『道路の改良』第7巻3号に「伊豆東海岸府縣道震災復舊工事に就て」(川勝忍)というレポートがある。

熱海町伊豆山の一部の如きは府縣道に沿ひたる家屋宅地約二町歩は原形の儘七十尺落下し,家屋宅地及宅地内の樹木も何等破損せず元の儘約七十尺の下に現存せる如きは驚くの外ない

七十尺≒約 21 m 滑って落ちたということ(具体的にどの地点なのかは記載がない)。

伊豆山は2度ほど泊まったことがあるけれど、佳いところですよね。

2023年4月追記、まだまだ復旧工事が続いていた

伊豆山の災害の現場上流

再発しないことが大事でしょうけれども。

最新記事=大和川水系の分水界を描く (2023年06月06日)
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