たぎり

Home » Articles » たぎり, published: 2019-07-02 (updated: 2019-07-12)

「片桐」(古くは「片切」)とは、片側が切れて崖になった地形を意味するというハナシ。
長野県の南部、天竜川の流域は「たぎり」が多い。片桐姓の由来と謂われる中川村片桐のほか飯島町田切があり、道の駅も「田切の里」だし、河川に至っては犬田切川・小田切川・大田切川・古田切川・中田切川・与田切川・片桐松川があり、JR飯田線も大田切駅・田切駅・上片桐駅と、コレデモカといった案配だが

水が勢いよく流れるありさまを言う言葉として、「たぎる」という動詞があり、この連用形は「たぎり」である...
「かたぎり」の「か」は意味を強める接頭語であろう...
~『地名を通して見る天竜川と人々の暮らし』(松崎岩夫著、p.57)

「たぎり」は、すべて天竜川の右岸(西岸)に遍在するという。辰野から天竜峡に至るまで、鉄道も街道もすべて右岸。商工業が栄えているのも、日本の最高学府(標高760m)である信大農学部が所在するのもまた右岸。
左岸には三峰川・小渋川・遠山川という暴れ川が流入しているが「たぎり」はないし、何もない(大鹿村が不憫に思えてきた)。

東京・目黒の蛇崩川右岸にも「田切」という地名が存在していたそうだ(今は公園にその名が残るとのこと。河川災害のリスクが高かった土地だったのだろうという想像は容易)。
「小田切」は佐久が発祥という説もあるようだ。姓が先か地名が先か、というのもあろうが、そこはよく分からない。
昨年の秋、飯島町田切から駒ヶ根市赤穂まで伊南バイパスが全線開通したが、土木が並み居る「たぎり」を克服したような格好か。
いずれにせよ伊那の「たぎり」がイマドキの地名に改称されなかったのは幸いなことだ。北信や東信にも見られるとのことなので、一寸探してみた

上に引用した図書を含む国土交通省中部地方整備局天竜川上流河川事務所のコンテンツ、「語りつぐ天竜川」は、とても興味深く勉強になる。
執筆者には地元の先生も多い。伊那谷は、教育県といわれる信州の中でも白樺派の影響が強く、とりわけ教育熱心だと聞いたことがある。阿智村出身の童画作家・熊谷元一氏(装丁家・熊谷博人氏の父)もまた、元教師だったと思う。
伊那谷おそるべし。

余談。
外出時には財布とスマホが必需品だが、私はスマホでマップを見ることがなく、アプリも使わない。
車を運転するときも、カーナビを使わない(そもそも信頼していない。運転初心者の子供たちのために付けているが「アテにするな」と言っている)。
知らないところへ行くときは、事前にパソコンで地図を読み頭に叩き込んでから出かける。
テメエの頭の中のメモリとコンパスが機能しているうちは、世話にならない(これを頑固ジジイと呼ぶ)。

調理師の免許と経験を持っていて良かったと思えるときは、料理しているときや皿洗いしているときではなく、庖丁を砥いでいるとき。それから、作り手の立場に思いが至る、という点。