陽の落ちる国
半島振興法は第1条で「地域の振興を図り、もつて半島地域の自立的発展、地域住民の生活の向上及び半島地域における定住の促進を図り、あわせて国土の均衡ある発展に資する」ことを目的としている。公布と施行は昭和60(1985)年だから、バブル期だ。
国土数値情報に、この半島振興法に基づく 半島振興対策実施地域データ がある。全国で23地域が指定を受けているが、その中から千葉県と静岡県の指定地域を(データ構造を少し修正のうえ)図示
この法律に実効性があるのか(あったのか)については疑問符が付くように思う。国土の均衡ある発展など実現できていないどころか、不均衡が伸長している。その目的を達成しているとはいえまい。
2019年10月の大雨で千葉県に甚大な被害があった。しかし当時の森田知事の無為無策が白日の下に晒されただけで、とくに房総半島南部の被災地は野ざらしだった。
半島は、その末端に行けば行くほど「どんづまり」となって交通網などの整備は後回しになる。下北半島、能登半島や大隅半島などなど、この法が公布・施行された38年前よりも衰退し過疎が進んだ地域ばかり。たとえば下田市の人口は1985年の30,209人から2020年は21,080人に、南房総市の人口は1985年の53,748人から2020年は35,831人に激減している。斜陽にたそがれているのが実情ではなかろうか?
半島という地理的特性はどこも相似するが、伊豆のように東西の状況がシンメトリーではないところもある。十把一絡げに扱うのは適切でないようにも思う。
10年の時限立法をズルズル延長し税制面で優遇する救済法と化してないか? 今では半島どころか日本列島全体の振興が必要だが。
陽はまた昇る。はず。
20代のころ、麻雀の席で安月給をボヤいたら、卓を囲んでいた実業家の人物から
カネは、もらうもんじゃねぇ。稼ぐもんだ
と諭されたことがある。私の青臭いところにロンを食らったので恥じ入った。これは今に至るまで満貫の金言として残っている。
吉行淳之介『贋食物誌』に次の記述がある(新潮文庫、1978年、p.30)
戦争中、新聞広告で「婿を求む、東大卒にかぎる、ただし文学部を除く」という新聞広告を見たことがある
名文家の吉行淳之介にしてはなぜか「新聞広告」の語が重複しているが、それはともかく昔の文学方面の男はロクでもなかったということだろう。著名な作家が私生活ではデタラメだったというハナシはざらにある(個人的には嫌いじゃない)。
現代でも「◎◎を求む、△△にかぎる、ただし▼▼を除く」という場面は多いだろうが、ロクでもない条件分岐しか脳裏に浮かばない。