産総研の地熱情報データベースから 温泉化学分析値データ の KML を Geojson 形式に変換し、さらに geometry type が Polygon (ペンタゴン) で示されていたので重心を求め Point に変更し軽量化した。
ここでは pH 7.0 を緑色とし、酸性は赤、アルカリ性は青、pH 値不明は黄色でマップにプロットしてみる。
泉温による場合は、30度以下を青、30~40度を黄、40~50度をオレンジ、50度以上を赤とした
2020年6月公開とのことで 6,858 件にのぼる。1件につき比重や成分など項目数が多いのだが、上掲の地図には泉温と pH のみ示した。深度が 2,180 m というものもあったがボーリング技術の賜物、東京の台場は 1,400 m だった。なるほど納得。
ここでの pH 値が最低の強酸性は青森酸ケ湯の 1.0、逆に高アルカリは埼玉都幾川と神奈川飯山の 11.3 となっている。また泉温では羅臼が最高で 106.0 度となっている。危険なレベル。
内訳は pH 7.0 が 138 件、酸性は 1,406 件、アルカリ性が 4,165 件、不明が 1,149 件となった。
ざっと見たところ、松之山など一部の温泉については現行の泉源が反映されていないところもある。白馬鑓温泉や、白骨の上流にある乗鞍源泉など、収納されていないものもある。同じ場所で採水年月日が異なり座標が重複しているところも一部ある (だから五角形ポリゴンを回転させたのだろうと思う)。個人的には北アルプスの山深くに「えっ」というのもあった。一部にボッケや噴気孔も含まれている。
なおオリジナルの CSV データでは総数 7,203 件となっている。
こうした「ひとのフンドシで相撲を取る」可視化だけではおもしろくない。問題は、ここから何を見るか。
たとえば日高、北上や揖斐の空白は何故なのか、火山性か非火山性か、断層との関係の有無は、といった疑問や興味から楽しまないとつまらないだろうとは思う。空白域は調査が及んでないだけかもしれないが。
小笠原の硫黄島のデータまであるが、これは1970年代から80年代の採水検査データのようだ。
地理院地図の温泉記号一覧マップ と照らし合わせると、いろいろ差異がある。現在の国土地理院タイルに示される温泉記号は約 3,930 件あまり。都市部の銭湯などは産総研のデータのほうが反映されている。
青森県の嶽温泉で、温度が急激に下がり湯量も減ったという報道があった。天恵の温泉は持続可能性との相性がほんとうに悪い。湧いたり枯れたり変質したりでデータをアップデートするのもタイヘンだ。群発地震が続く能登半島でも温泉に変化があるのだろうか?
余談。
選択と集中などと銘打った施策がいろいろ問題を起こしているが、博物館など全国の文化施設も窮地に陥っているらしい。カネがないというのはつらいことだ。
長野県大町市にある山岳博物館の広報誌ないし機関誌『山と博物館』のバックナンバーをつらつら読んでいる。私がこの博物館を訪れたのは一度だけだが、小さく素朴ではあるけれど登山の世界やライチョウの保護や研究でも有名な無二の博物館。開館は1951 (昭和26) 年だが、昭和30年代には市議会で廃止転用論も出る危機もあったらしい。
日本に初めて来たパンダがカンカンとランランであることは知っていたが、その返礼として大町山岳博物館で飼育されていた2頭のニホンカモシカが北京に贈られたという事実は知らなかった。博物館が政治に貢献した一例だろう。こういう文化施設は守られるべきだと思う。
バブル期以降、博物館法に則る博物館だけでなく種々雑多なハコを乱立させたことにも問題があったのではないか? ひとえに文化施設といってもピンからキリまであるように思う。
儲からないなら捨ててしまえ、という発想は昔からある。文化や教養よりも損得勘定が優越する経済至上の考え方は今なお一部にある。
しかしカネがないから、緊縮だからといって為政者が文化や教育を蔑ろにするのは罪深いと思う。
娘氏が通った女子大にはコンサートホールがあり、そこで文化研究講座という4年間にわたる必修科目があった。野村萬斎の狂言や三遊亭圓楽の落語、ドレスデンフィルの演奏などに娘氏は直に触れることができた。これは文化資本にアクセスしやすい都内という有利な条件だからこそなのだが、この講座があるだけでも入学した価値はあったと親としては思っている (私自身は教養や文化の素養が足りないという自覚と後悔がある)。