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注記とフォントの件

公開日: 2021年5月24日

国土地理院の地図タイルは、ズームレベル15で一挙に情報量が増える。
すると、おかしなところもイロイロ出てくる。

¿¡ y qué !?

POI POI POI などなど、漢数字「一」のバランスがおかしい。

漢数字まみれの旭川市を見ると、通常表記は問題ないが、斜体のかかった縦書きの漢数字「いち」が、やはりおかしい(POI POI など)。OCR で読み込んだら起こりがちな誤認識、漢数字の「一」ではなく記号の「 ̄」ではないかと勘繰ったが、ほかにも「POI 」や「POI 」などで促音や中黒が上に寄っている。ソフトウェアの問題だろうか? InDesign や QuarkXPress ならば起こらないと思うのだけれど。

新潟県糸魚川市、縦書きで「蓮台寺PA」と「フォッサマグナミュージアム」が POI 、淡色地図で見ると錯覚しやすい。実際には PA が北を、ミュージアムは南を指している(カナは字間が広く見えるものだ)。「POI 」にいたっては、その注記だけで 1 km を超える(長すぎる)。いずれも、等角にこだわらず新聞(紙媒体)の平体のように天地を80%程度につぶし、カーニングで字間を詰めるなどすれば見やすくなる。ラスタかベクタかの問題ではなく、視覚への訴求は大事なのだが。

国土地理院の仕様

「平成14年2万5千分1地形図図式について(経過報告)」(国土地理院時報 No. 98, 2002)によると、

明朝体を廃止し,ゴシック体により対応する。
昭和61年図式において,明朝体とゴシック体が同じ字大になるものについては,フォント種類を代えることで対応する。(細ゴシック,太ゴシックなど)
右傾斜体は,Windows におけるイタリック体とする

ざっくりした説明にとどまる。逆に言えば、書体を加工する余地はあるのではないかと思ったのだが、平成24年の達14号「平成24年電子地形図25000図式(表示基準)」によると、

 (書体)
第65条 書体は、ゴシック体とする。
 (字形)
第66条 字形は、直立体と傾斜体を用いて、第73条の規定に基づき表示する。
 (字大)
第67条 「字大」とは、文字を囲んだ四辺形の高さをいう。
 (字隔)
第68条 「字隔」とは、一つの注記において、隣接する文字と文字との間隔をいい、一つの注記の字隔は全て等間隔とする。

字大は「幅」とは書いていない。
また第73条で「原則として」道路施設(IC、PA、道の駅等)は字大が 4 pt、字隔は 1/10 と定められている。文教施設は字大が 5.5 pt、字隔は 1/10 と定められている。
この規定のためカーニングできないということだろうか? 字隔 1/10 といっても、漢字とカナでは結果の見栄えがまったく異なってくるのだが......。官公署の条文には「原則として」という便利な文言が多いものだが、上記の京福電鉄駅や博物館などは、例外的に柔軟なデザインがされても良い気がする。個人的な感覚としては、1/10 の字隔は広すぎて、ベタでも良いくらいだ。
スマホ全盛の、表示領域が限られる今こそ、表現の工夫は重要だと思う。

次は、左が標準で字隔 1/10、右は平体で字隔ゼロ

平体

民間人としては「達を改正すればハナシは早い」などと思うのだが、中央省庁はそうそうカンタンにはいかない、ということも私は(某A省との仕事などから)経験的に知っている。
つまるところ管理の煩雑さが最大の問題だろうし、外注に際した仕様書の内容など知る由もないし、大人の事情もあるだろう。

編集稼業のときは Adobe Illustrator でそういう作図もやっていたし、装丁も手がけていたので、つい気になってしまう。
......重箱の隅をつつく粗探しをしているみたいで、おとなげない。

ニュースなどで最近、ごく少数の Extraordinary People が大多数の Ordinary People を統べるというような発想が目立って、誠に遺憾。