地震や集中豪雨、火山噴火など災害にもいろいろあるが、山腹の崩壊、地すべりの流下、火山噴出物などが河川を塞ぎ、形成されるダムを「土砂ダム」とか「天然ダム」などと呼称されている。形成後に崩壊(決壊)し、下流に被害を及ぼすこともある。
水路を完全に閉塞して湖沼を形成することもあり、永続的なものであれば堰止湖と呼ばれる。次のマップでいえば、青木湖、大正池など。
主な河道閉塞をピックアップ。
長野県の犀川。
1847(弘化4)年5月8日の善光寺地震(M7.4)の際に、現在の長野市信更町内山から西岩倉付近に大規模な地すべり。犀川を堰き止めて高さ最大65m、湛水面高度約470mで約40km上流まで湛水する天然ダムを生じた。地震から20日後の同年5月28日の夕方、一気に決壊、谷口から善光寺平に広がる犀川扇状地の全域に氾濫し未曾有の大災害を起こした。堰き止め湖によって十数ヶ村が水没、決壊による流失家屋810、土砂流入家屋2,135などなど。
静岡県の富士川。
1854年(安政元年)12月23日に起きた安政東海地震の際に、白鳥山の東斜面が崩壊、富士川が閉塞。この土砂ダムはわずか1日で決壊したというが、水位上昇が約4km上流の万沢集落まで及んだ史実があるということで、標高150mと仮定しトレース。なお、白鳥山の東斜面は宝永地震(1707年)のときにも崩壊し富士川を閉塞させている。
長野県の姫川。
1911年(明治44年)8月8日、稗田山崩れによって姫川が河道閉塞。崩壊に結びつく直接的な要因は不明。湖の端部は3km上流の下里瀬集落まで達し、43戸が浸水したとの記録がある。糸魚川市の河口にまで被害が及び、翌年(1912年)7月22日にこの天然ダムは完全に決壊。
近年では2004年新潟県中越地震による山古志村、2011年台風12号集中豪雨による奈良県十津川村などの大被害が記憶に新しい。
こうして見ると、中央構造線やフォッサマグナ周辺は、やはり油断ならない。