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碓氷峠を越える鉄道と道路のルート

公開日: 2020年1月30日

鉄道も道路も、街と街をなるべく直線で結ぶほうが効率的で速いに決まっている。新幹線や高速道路は猶更。
だが群馬県と長野県の境では、北陸新幹線も上信越自動車道も大きく北へ迂回している。同じ群馬でも、新潟との境(谷川岳周辺)のストレートな線形とは対照的。

ちょっと調べると、有為のヒントがあった

かつての信越本線(次の地図中の赤い線)は、66.7パーミル(‰)という急勾配の線路をアプト式で碓氷峠まで登っていた。
新幹線を通すにあたり、その高速性を担保するため当初は12‰の案(凡そ紫の線)だったとのこと。東海道新幹線も山陽新幹線も設計は15‰以下だったからだ。

上信越自動車道(緑の線)は POI から POI にかけて遠回りする。

結果的に新幹線は標高の高い POI に停車させることを優先し、最急勾配30‰のルート(青い線)となった。徐々に高度を稼ぐには水平距離も必要になるが、JR上越線のようにループを用いるのは現実的でないため北へ遠回り。
長野を地盤としていた元首相の羽田孜、軽井沢で儲けていた西武グループ元オーナー堤義明など絡んだ結末。それらの政治的・経済的要請が、勾配に対する新幹線の技術向上さえ実現させたという。
また軽井沢から上田へ向かうには千曲川右岸を通れば速そうなものを、南へ迂回している。これには長野五輪の招致成功、ミニ規格からフル規格への変更、小諸と岩村田の戦い等々、さまざまな要因の結果。
上信越自動車道も、なるべく軽井沢の近くに POI を、という意味で北へ遠回りしたとの由。

地図上には「なぜ?」と思わされる線路や道路の線形があちこちに見られるけれど、断層や地滑りといった地質・地形など自然由来のものばかりではないということを、この地域は端的に示していると思う。
長崎新幹線をめぐる佐賀県の、またリニアをめぐる静岡県の立ち位置もまた、いろいろ複雑で生々しいチカラが作用しているのは間違いない。