Japonyol » ブログ » 境川水系の急坂

境川水系の急坂

公開日: 2024年7月24日

城山湖周辺を源とする境川は、その名の通り武蔵国と相模国の境界であり、現在も原則的には町田市と相模原市などの境界になっている。
神奈川県 によると、とくに下流域の藤沢市や鎌倉市で台風や集中豪雨による洪水の被害があったとのこと。

中流域の段丘崖には必然的に急坂が散在している。
相模原台地の東縁にあたる相模原市南区上鶴間本町には 28 % 勾配の標識がある

28 %勾配の標識

当然Oリングの真空コンクリート舗装だが、ガードレール代わりの鉄パイプがこころもとない。
坂の途中に遷急点があり、それより下がもっとも勾配がキツい (次の写真では Crest から先が見えてない)

相模原市南区上鶴間本町

境川に架かる上鶴間橋から下流を見る。左岸は東京都町田市、右岸は神奈川県相模原市

上鶴間橋から

もともと蛇行していた河道が直線的に改修されているのだが、それが都県境をややこしいものにしている。相原や小山、鶴間といった地名が左右両岸両市に存在するのも紛らわしいが、分水界を行政界としていないのだからしかたない。
東京都町田市は大部分が境川流域と鶴見川流域に属する。この地理特性も神奈川に親和性がある理由だと思う。

境川は流れ流れて藤沢市、江ノ島の対岸で相模湾に注ぐ

60年代の航空画像を見ると、この水系がいかに都市化が進んで河道が改修されたか分かる。

ところ変わって次は横浜市瀬谷区相沢。境川の左支、相沢川の右岸にある天竺坂。
親に向かって何だその勾配は !? とでも言いたくなるレベル

天竺坂

パーセンテージを示す標識はないが、上鶴間本町より急だと思う。雨天時にマンホールの蓋を踏んだら滑って転倒しそうだ。
トルクのない非力な原付では登れないかもしれない (歩いて往復したら良い運動になった)。

次の写真は天竺坂を下った先の相沢二の橋。相沢川は小さな川だが、この少し上流に雨水調整池と遊水池があり、さらにその上流は2027年に開催される横浜国際園芸博覧会の会場となる米軍の旧上瀬谷通信隊跡を貫流している

相沢川

もともと蛇行の外側で攻撃部だからか? 侵食の作用で段丘崖に急傾斜地を発達させている。天竺坂の脇は法枠工でガッチリ

法枠工

泉区から戸塚区にかけては境川の氾濫を防ぐ広大な遊水地公園がある。
なお瀬谷区も泉区も栄区も、元は戸塚区。境川左岸流域コミュニティといったところ、今なお結びつきは強い。

箱根駅伝3区と8区で通過する藤沢市の遊行寺坂も境川の段丘崖。現在の県道30号 (かつての国道1号) は坂の上部が掘削され勾配が緩くなっているが、改修前の江戸時代の東海道はもっと急坂だったらしい (そりゃそうだ)。
五雲亭貞秀『東海道名所之内ふぢさは遊行寺』国立国会図書館デジタルコレクション から

ふぢさは遊行寺

江戸末期、文久3年 (1863年) のこの絵では、すでに坂は掘り下げられ切り通しのように描画されている (右上の部分)。

帷子川や今井川などによる侵食谷、開析谷だらけの保土ヶ谷区周辺が坂ばかりなのは分かりやすいが、境川水系の段丘崖も負けてない。

おまけ、産総研で買った小さなスケール

産総研で買った小さなスケール

ものさしでは測れないことが世の中には多い。