『土木学会誌』第60巻第10号 (1975年9月) に「出港準備完了!『下水道丸』」という小さな記事があった。日本下水道事業団の研修施設が発足したときのルポ。そこに以下の記述があった
「...日本の国情からか下水道の建設があまりにも遅れてしまった。それに気がつくのが遅かったことと,ここへ予算が回ってくるのに時間がかかったし,その間,衛生工学の必要性がさけばれていた割に,教育面での補完がこれまた十分でない。悪い条件が重なって今日に至っているわけです...」
全国的にみても下水道が完備されているのは三鷹市のみ,1 % にも満たない県もまだあると聞く...
現行の 下水道法 が公布されたのは1958年とのこと (昭和33年法律第79号)。三鷹市には先見の明があったということか。
存外、日本の下水道の歴史は浅い。上記のように半世紀前は下水道整備の途上で、実際に昭和50年ころは街も川も、のきなみ汚れていたし悪臭も放っていたように記憶している。生活用水の垂れ流しはザラだった。ニッポンの人と社会が異様なまでの潔癖に向かったのは平成期に入ってからだったと思う。
公益社団法人日本下水道協会に「都道府県別の下水処理人口普及率」(令和6年度末) がある。これに色付けしてみる
全国平均は 81.8 % だが、これを高いとみるか低いとみるか?
政令都市では東京特別区と横浜市と大阪市が四捨五入で 100 % となっているが、最低の岡山市では 69.3 % にとどまっている
人口が集中する都市部はまだしも中山間地域や農村地帯はどうしても敷設が容易でなかろうとも思う。
詳しくは同協会の FAQのページ に分かりやすく説明されている。なお市町村別の普及率データもある。
国土交通省は老朽化した上下水道管を取り換える更新工事をおこなう自治体への補助金を2026年度に拡充する方針、との報道が8月にあった。八潮市の道路陥没事故を反省した施策は評価されてよいと思うが、昭和期に敷設された水道管の老朽は亢進しているだろうし、そもそも技術者も不足しているのではなかろうか?
余談。20代から40代の若い方々の一部には「ねたみ」や「そねみ」に起因する鬱屈があるように思う。そういう不満や怒りが攻撃性を帯びると、ろくなことにならない。そうした感情を政治利用するのはもってのほか (だが世界じゅうで意図的に悪用されている)。