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川崎市麻生区の弘法松公園

公開日: 2024年11月25日

麻生区百合丘にある弘法松公園、南から北西方向の眺望がきいて丹沢の大山から南アルプスを経て武甲山まで見えた。
次の写真の撮影地点から左端の大山まで 31.3 km、右端の山梨県黒岳までは 59.9 km の距離がある

弘法松公園からの眺望

現地にあるデザインに優れた案内板によると伊豆の天城山も見えるとのことだが、富士山とともに雲隠れしていた

弘法松公園から眺望できる山岳の図

保育園の幼児たちが遊具で元気に戯れていた。
この公園内のもっとも高い所に、次の三等三角点「高石」標高 118.2 m がある

三等三角点 高石

1960年代に設置されたようだが、半世紀あまりを経て周囲の表土が流失したのか踏み固めなのか、浮き上がる格好になっている。こうして登山道のような状態になってしまうのは都市公園の泣き所だろうが、子供たちがドングリを拾ったりするのはもっと大切なこと。
国土地理院「三角点Q&A」によると地中に埋まっている柱石のさらに下に盤石があるから観測に影響はないのだろう。

弘法松公園ホームページ に次の記述がある

この地はかつての都筑郡と橘樹郡の境界にあたる峠であり、津久井街道を行きかう旅人に、この巨松はよき道標でもありました

次は大正6年測図昭和7年要部修正参謀本部2万5千図「溝口」Stanford Digital Repository から一部

2万5千分の1地形図、溝口から

当時は弘法松の南西側が都筑郡柿生村、北東側が橘樹郡生田村。
弘法松は昭和31年火難のため衰退、のち枯死とのことで現存しないが、周囲から目立つ巨大な木だったのだろう。
幹線道路は津久井道。これに並行する小田急線はのちに多摩線建設のため線形が変わっている。高圧電線の描画は変わってない。

郡界だったと同時に、多摩川水系と鶴見川水系の分水界でもある。冒頭の写真は旧都筑郡側の鶴見川流域を眺めている。
黒川から王禅寺にかけてこの分水界をたどることは都市化により困難になっているが、弘法松公園は明瞭。
次は国土地理院の「自分で作る色別標高図」から

国土地理院の自分で作る色別標高図から

小田急線は勾配の頂点が切り通しの百合ヶ丘駅にあるようだ。津久井道の Crest はわずかに西だと思う。
次に現行地形図と1957年画像を比較対照

下段は国土地理院の地図・空中写真閲覧サービスから USA, M1010R1, 193 (1957 (昭32) 年10月10日撮影) をトリミングした。
都市化の前なので元の谷戸地形が明確で分水界も見当をつけやすい。開発が進んだ現在の排水設計がどうなっているのかは知る由もない。

橘樹 (たちばな) の名は現在では橘樹神社と橘樹歴史公園 (高津区) くらいしか残っていない。上記の地理院マップにプロットした。
都市の地理を理解するには過去を対照することが必須だなとあらためて思う。

参照 「川崎市北部 多摩区・麻生区の町名の移り変わり」(PDF, 川崎市)