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スイッチピッチャー対スイッチヒッター

公開日: 2025年7月27日

プロ野球のオールスター第1戦で、ソフトバンクの左投げ投手モイネロが右腕で投げていた。

次の映像は2008年6月19日のマイナーリーグ、スイッチピッチャーのパット・ベンディット (Patrick Venditte) とスイッチヒッターのラルフ・エンリケス (Ralph Henriquez) の対戦。
ベンディットが右で投げようとしたらエンリケスは左打席に立とうとし、それを見たベンディットは左で投げようとグラブを持ち替えたらエンリケスは右打席に...というエンドレスな混乱を引き起こし、実況も解説もゲラゲラ笑っている

当時の Official Baseball Rules では両投げと両打ちが対戦することなど想定されていなかったために混乱をきたした。
球審はその裁量で打者のエンリケスにどちらで打つか先に決めることを求めた結果、右対右の投手に有利なかたちとなった。

この件を受け MLB は Official Rules を改正し、両利きの投手について現行は次のように規定されている

5.07 Pitching
(f) Ambidextrous Pitchers

A pitcher must indicate visually to the umpire-in-chief, the batter and any runners the hand with which he intends to pitch, which may be done by wearing his glove on the other hand while touching the pitcher’s plate.

これに準拠する日本の公認野球規則の訳文は

5.07 (f) 投手は、球審、打者および走者に、投手板に触れる際、どちらかの手にグラブをはめることで、投球する手を明らかにしなければならない。

つまり現実に起こったマイナーでの裁定とは反対の、打者に有利なかたちとなった。
当時アマチュア野球の審判をやっていた私には勉強になるケースだった。

そもそも試合の目的は

1.00–OBJECTIVES OF THE GAME
1.05 The objective of each team is to win by scoring more runs than the opponent.

日本語の訳文は

各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。

つまり Baseball は攻撃的な競技であり、打つことを優先する思想が根底にある。たとえば打席内で打撃姿勢をとっていない打者に投球したら投手にボークが宣告されるのも、同じ基本理念に拠るのだと思う。
19世紀の中ごろまでは先に21点を取ったチームが勝ちというルールだったという経緯からしても、起源は点取りゲームだ。

もともと米国の人々は 0 - 0 の引き分けを善しとする気質ではない。勝ちか負けか、強いか弱いかといった二項対立を好むし、バカスカと打ちまくる試合を望んでいるのもまちがいないと思う。

ひるがえって近年の日本の野球はプロもアマも打球が飛ばず点が入りにくい状況になっている。これは、おもしろさを減滅させているのではなかろうか?

グラブと硬球

ラテンアメリカでは子供に左右どちらでも打たせてスイッチヒッターが多いと聞いたことがある。既成概念にとらわれず身体能力の見極めをするということなのだろう。モイネロは12歳まで右でも投げていたそうだ。
利き腕や利き足だけでなく、自身の利き目や利き耳を知っておくのは良いことだと思う (私は目だけ左利き)。

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