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日本、韓国と中国の防空識別圏

公開: 2013年11月28日, 更新: 2023年04月11日 by ちずぞう

「領海」の概念は「領海及び接続水域に関する法律」にて明文化されている。国連海洋法条約との整合も求められる。排他的経済水域(EEZ)についても同じ。
「領空」は、領土・領海の上方空域を指すと考えて差し支えないだろう。
ところが「防空識別圏」は、少しワケが異なり、軍事の範疇に入る。これに許可なく侵入するものがあれば航空自衛隊がスクランブル発進、ということになる。
日本の防空識別圏の根拠は、法律や政令事項ではなく、昭和44年防衛庁訓令第36号に拠っている。この庁訓の規定に照らし地図に描画した。青が日本の防空識別圏、赤い線が隣国の今般の設定。
東シナ海の天然ガスを包含し、兎にも角にも大洋への出口が欲しいという意図が明白。

その庁訓の全文が以下。

防衛庁訓令第36号

 防空識別圏における飛行要領に関する訓令を次のように定める。
昭和44年8月29日

防衛庁長官 有田 喜一 

防空識別圏における飛行要領に関する訓令

(目的)
第1条 この訓令は、防空識別圏における自衛隊の使用する航空機の飛行要領を定めることにより、わが国の周辺を飛行する航空機の識別を容易にし、もつて自衛隊法(昭和29年法律第165号)第84条に規定する領空侵犯に対する措置の有効な実施に資することを目的とする。
 (防空識別圏の範囲)
第2条 防空識別圏は、次項の外側線によつて囲まれる空域から第3項の内側線(第4項の規定により変更されたときは、変更後の内側線)によつて囲まれる空域を除いた空域とする。
2 外側線は、次の(1)から(30)までの地点を順次直線((10)の地点と(11)の地点との間については、与那国島に係る領海の基線(領海及び接続水域に関する法律(昭和52年法律第30号)第2条第1項に規定する基線をいう。)からその外側14海里の線(ただし、(10)の地点と(11)の地点とを直線によつて結んだ線の西側の線に限る。)並びに(24)の地点と(25)の地点との間及び(26)の地点と(27)の地点との間については、北海道本島の海岸線から海上3海里の線)によつて結ぶ線とする。
 (1) 北緯45度45分7秒 東経138度44分47秒
 (2) 北緯40度40分9秒 東経132度59分50秒
 (3) 北緯37度17分10秒 東経132度59分50秒
 (4) 北緯36度11秒 東経130度29分51秒
 (5) 北緯35度13分11秒 東経129度47分52秒
 (6) 北緯33度12秒 東経126度59分53秒
 (7) 北緯33度12秒 東経124度59分53秒
 (8) 北緯30度13秒 東経124度59分54秒
 (9) 北緯28度14秒 東経122度59分54秒
 (10) 北緯24度42分29秒 東経122度59分55秒
 (11) 北緯24度12分12秒 東経122度59分55秒
 (12) 北緯23度15秒 東経122度59分55秒
 (13) 北緯23度16秒 東経131度59分52秒
 (14) 北緯30度13秒 東経131度59分51秒
 (15) 北緯30度13秒 東経134度59分50秒
 (16) 北緯31度40分13秒 東経140度20分49秒
 (17) 北緯33度10分13秒 東経143度13分48秒
 (18) 北緯35度13分12秒 東経144度20分47秒
 (19) 北緯40度13分10秒 東経144度54分46秒
 (20) 北緯42度47分9秒 東経146度22分45秒
 (21) 北緯43度16分9秒 東経145度43分45秒
 (22) 北緯43度20分9秒 東経145度51分45秒
 (23) 北緯43度23分10秒 東経145度49分48秒
 (24) 北緯43度26分9秒 東経145度48分15秒
 (25) 北緯43度24分9秒 東経145度34分45秒
 (26) 北緯43度30分9秒 東経145度21分45秒
 (27) 北緯44度3分9秒 東経145度18分45秒
 (28) 北緯44度26分9秒 東経145度44分45秒
 (29) 北緯45度45分8秒 東経145度44分44秒
 (30) 北緯45度45分7秒 東経138度44分47秒
3 内側線は、次の(1)から(19)までの地点を順次直線((10)の地点と(11)の地点との間については、北緯26度22分14秒東経127度47分53秒の地点を中心として、北緯25度4分15秒東経126度36分53秒の点を通る半径100海里の円弧)によつて結ぶ線とする。
 (1) 北緯44度8秒 東経140度59分46秒
 (2) 北緯43度9秒 東経139度34分47秒
 (3) 北緯39度20分10秒 東経139度29分48秒
 (4) 北緯38度28分10秒 東経138度59分48秒
 (5) 北緯36度11秒 東経134度59分50秒
 (6) 北緯35度50分11秒 東経132度59分50秒
 (7) 北緯34度12秒 東経129度59分52秒
 (8) 北緯32度40分12秒 東経128度29分52秒
 (9) 北緯30度43分13秒 東経129度42分52秒
 (10) 北緯27度56分14秒 東経128度25分53秒
 (11) 北緯27度12分14秒 東経129度24分52秒
 (12) 北緯30度13秒 東経131度4分52秒
 (13) 北緯33度12秒 東経133度59分50秒
 (14) 北緯33度12秒 東経135度59分50秒
 (15) 北緯35度12秒 東経140度59分48秒
 (16) 北緯39度20分10秒 東経142度29分47秒
 (17) 北緯41度10秒 東経142度29分47秒
 (18) 北緯42度20分9秒 東経143度59分46秒
 (19) 北緯43度9秒 東経143度59分46秒
 (20) 北緯44度9秒 東経142度59分46秒
 (21) 北緯44度8秒 東経140度59分46秒
4 統合幕僚長は、事態が緊迫し、必要があると認める場合には、防衛大臣の承認を得て、臨時に前項の内側線を変更して防空識別圏を拡大することができる。
 (飛行計画の通報の際の通報)
第3条 機長は、次の各号に該当する場合には、飛行計画を通報する際、それぞれ当該各号に掲げる事項を、適当な方法で、防空管制群又は警戒群に対して通報しなければならない。
 (1) 有視界飛行方式により防空識別圏を飛行する場合 その旨
 (2) 防空識別圏に外側線側から進入する場合 防空識別圏への予定進入地点及び予定進入時刻又は離陸後進入までの所要時間
 (3) 次条第1項各号に該当する場合において、当該航空機に無線による通信の設備又は配員が欠けているか又はこれが十分でないため同項の通報をするための無線による通信をすることができないとき その旨
 (飛行中の通報)
第4条 機長は、次の各号に該当する場合には、それぞれ当該各号に定めるところにより当該各号に掲げる事項を、適当な方法で、防空管制群又は警戒群に対して通報しなければならない。
 (1) 防空識別圏を飛行する場合(計器飛行方式により管制空域を特定経路の指定を受けて飛行する場合を除く。) 防空識別圏の飛行の開始後30分以内及びその後少なくとも30分ごとに、現在の位置及び30分後の予定位置
 (2) 航空路を飛行して防空識別圏に外側線側から進入しようとする場合 防空識別圏に進入する直前の位置通報点において、防空識別圏への予定進入時刻
 (3) 航空路外を飛行して防空識別圏に外側線から進入しようとする場合 防空識別圏に進入しようとする30分前から15分前までの間において、防空識別圏への予定進入時刻、予定進入地点及び予定進入高度
 (4) 防空識別圏に外側線側から進入した後航空路外を日本本土へ向けて飛行する場合 日本本土の海岸線から海上100海里の地点において、その位置
2 前項の規定は、同項各号に該当する場合において、当該航空機に無線による通信の設備又は配員が欠けているか又はこれが十分でないため同項の通報をするための無線による通信をすることができないときは、適用しない。
 (通報の訂正)
第5条 機長は、次の各号に該当する場合には、その旨を、遅滞なく、適当な方法で、防空管制群又は警戒群に対して通報しなければならない。
 (1) 前条第1項第2号又は第3号の規定により通報した予定進入時刻と前後5分以上異なつた時刻において防空識別圏に進入することが明らかとなつた場合
 (2) 前条第1項第3号の規定により通報した予定進入地点から20海里以上離れた地点において防空識別圏に進入することが明らかとなつた場合
 (特別の飛行の場合の特例)
第6条 前2条の規定は、特別の任務又は教育訓練のため一定の期間、防空識別圏の一定の空域を飛行する場合において、航空機の使用及び搭乗に関する訓令(昭和36年防衛庁訓令第2号)第2条第6号に規定する航空機使用者が航空総隊司令官又はその指定する者と必要な協議を行つたときは、適用しない。この場合において、機長は、当該協議に基づいて行う航空機使用者の指示に従わなければならない。

附 則
この訓令は、昭和44年9月1日から施行する。
(中略)
附 則(平成22年6月16日省訓第23号)
この訓令は、平成22年6月25日から施行する。

冷戦のさなか、当時のソ連を意識して施行されたと想像しても誤りではないと思う。

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