十数年ぶりに「智利日報」モード
『チリ首都で非常事態宣言、地下鉄運賃の値上げめぐり暴動』の見出し。「まだアジェンデとピノチェトの続きなのか」と思ったら
チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は首都サンティアゴに非常事態宣言を発令し、治安に関する権限を軍に委譲した。同国では、地下鉄の運賃値上げに対する抗議活動が行われ、暴動も起きていた【AFP=時事】
地下鉄運賃が800ペソから830ペソ(日本円で約122円から約127円)に値上げされたから、というのが理由のすべてではないだろう。
ひと昔まえの南米なら、鬱憤や不平不満の捌け口・ガス抜きとしてサッカーがあてがわれる、というのが常套手段だったと思う。
もはやそういう時代ではなく、新しいドグマがあるのか知らん? 来月にはAPECの最終高級実務者会合・閣僚会議・首脳会議を控えているが、大丈夫か?
チリ・サンティアゴの地下鉄網と、主な暴動発生地点
私がチリに住んでた1993~96年は軍政から民政へ移管して間のない時期だったし、対立軸は「左右の政治的イデオロギー」という分かりやすい状況だった。9月11日にドカンという音が聞こえて停電するのは予定調和、くらいの理解だった。
しかし今やチリはOECDの加盟国であり、中南米でもっとも政経の安定した国となったはずなのに、軍を動員する非常事態宣言、さらに外出禁止(戒厳令)告示は異常だ。
チリ憲法39条(私権制限)
El ejercicio de los derechos y garantías que la Constitución asegura a todas las personas sólo puede ser afectado bajo las siguientes situaciones de excepción: guerra externa o interna, conmoción interior, emergencia y calamidad pública, cuando afecten gravemente el normal desenvolvimiento de las instituciones del Estado.
El Mercurio 紙のキャプチャ
もはや私には現地の詳細が分からないが、世界の流れにたがわず、チリでも貧富の格差は広がっているはずだし、若者の、世界や社会に対する閉塞感や鬱屈というものは、この国に限った話ではないと思う。
個々人のチリの人はおおむね勤勉で大人しいが、何かの拍子に集団で熱暴走することがあった(これは日本も似ている)。ピニェラとバチェレの繰り返しにも飽きているかも知れない。
今回、高校生ら(煽動されているだろうが)若者の暴徒化が発端になっている、という点が特徴的。政治も宗教も絡まずこういう騒擾が起こるのは、従来の既成概念では珍しい。日本を含め世界中で、こういうことが起きかねないのかなぁ?
なお明後日22日11:20、チリ海軍練習帆船エスメラルダが晴海埠頭へ接岸の予定。前回の来日のときは行ったが、今回は行かない。
2004年6月の来日時、船上で行われたレセプションに参列したら、駐日チリ大使が「un pedazo de Chile...」と述べたのだが、国際法上エスメラルダ船上はチリの領土である。
写真は前回来日時(2016年8月)のもの。