「自粛を要請」の意味合い?

Home » Articles » 「自粛を要請」の意味合い?(公開日:2020-03-26 更新日:2020-03-26)

東京都が「感染爆発の重大局面だ」として「外出自粛要請」を出した。「お願いします」という態度は政府と同じ。
米国やドイツのような「強制力」は無い(フランスに至っては違反すると罰則があるようだが)。
昨年10月チリで大規模デモが起こって大荒れしたとき私は記事に書いたが、チリ政府が Toque de queda(外出禁止令)を出したのは、次の後ろ盾(法的根拠)があるからだ。チリ憲法39条を再掲

El ejercicio de los derechos y garantías que la Constitución asegura a todas las personas sólo puede ser afectado bajo las siguientes situaciones de excepción: guerra externa o interna, conmoción interior, emergencia y calamidad pública, cuando afecten gravemente el normal desenvolvimiento de las instituciones del Estado.
【意訳】憲法がすべての人々に保証する権利は、以下の例外的な状況では制限を受けることがあります:内外の戦争、国内の騒擾、緊急事態や災害が国家に深刻な影響を及ぼすと認められる場合

公権によって私権を制限することがあり得ますよ、という含みをあらかじめ持たせてある。
日本国憲法には、そんな規定はない。今般のウイルスには関係ないが、平成16年に公布された『武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律』いわゆる「国民保護法」では

(国民の協力等)
第四条 国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
2 前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。
3 (略)
(基本的人権の尊重)
第五条 国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。
2 前項に規定する国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。
(国民の権利利益の迅速な救済)
第六条 国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。

仮にミサイル攻撃を受けるような事態が起こっても、政府・行政の国民に対する強権発動を許していない。あくまで国民は「協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努める」という努力義務にとどまる。
「要請に当たって強制にわたることがあってはならない」とクギまで刺している。
「命令」などの強制力を法に明文化することは、憲法の保障する基本的人権との整合という点で、ありえないと思う。

昨夜の都知事の会見は抑制の効いたトーンであったが、もしもリアルな危機状況を提示し強い言い方をしたならばパニックや混乱を誘発させかねないから、妥当だったと思う。
(ただしメディアがプロパガンダよろしく報道したら意味が変わってしまうとは思う)
つまるところ「自粛を要請」という柔らかな言葉しか用いることが出来ないはずだ(政府も同じ)。

改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」もまた、人権との整合という点では国民保護法と同様だと思う(熟読してないが)。
私権を制限すべきか否か、というレベルの危機を経験するのは(戦中世代を除けば)初めてではなかろうか。
※もしも「封鎖」という実力行使に及んだら、それは法的根拠がないはずだから「超法規的措置」ということになるのではないか。