今年度の土木遺産が発表された。日本水準原点と日本水準原点標庫や旧熱海線鉄道施設群、七川ダムなど全28件をマップに一覧表示。
群馬県みなかみ町の「土合砂防堰堤」が含まれている。
出典:土木学会
土合砂防堰堤は、湯桧曽川に建設された群馬県初のアーチ式堰堤で、砂防を目的として谷川岳と一体となって景観を形成する貴重な土木遺産です
橋梁、トンネルやダムなどは、その存在意義と目的が誰の目にも分かりやすいし、マニアな人も少なくない。
しかし砂防堰堤というのは、相対的に地味だ。
環境とくに景観においては、自然景観中の人工構造物が突如として現れるため、違和感を持つ人もいるかもしれません。この悪いイメージを払拭するためには、砂防施設の役割を十分理解してもらうための啓発活動が不可欠です。砂防施設は、意識的に景観に配慮しなければ景観を損ねる異物質と捉えられる可能性があります。そこで、砂防施設自体が土砂災害を防いでいるといったことを見ただけで理解できるようなわかりやすい形状にする努力が必要だと考えます(嶋丈示「鋼製砂防構造物について(8)景観設計」『SABO』Vol.122、p.15、2017年8月、一般財団法人砂防・地すべり技術センター))
大学生当時の私は、北アルプスの各地を登山していたとき、かようなコンクリの堰堤を目の当たりにするたび「こんな自然景観を損なうものを何故?」と、無知ゆえに、苦々しく思っていた。
今となっては、その存在理由を思い知り、恥じ入るしかない。
上記の機関誌『SABO』では、小橋澄治・京都大学名誉教授の軽妙な連載エッセイもまた、機微と思索と知見に満ちていて、とても勉強になる(しかもクスクス笑わされてしまうユーモア!)。
土木遺産一覧マップも、更新した。