地図蔵 ▷ 2012年までの記事「チリ大地震の件(続き)」

チリ大地震の件(続き)

(2010年3月 4日)

チリ大地震の発生から1週間近く経った。

(1) 長く左派連立政権で要職を歴任した Francisco Vidal 国防相。
「津波警報を出さなかったとして海軍を非難した」(CNN)とのこと。
陸海空軍と警察のトップたる人物が、何をかいわんや。自身の隷下の組織を非難しては元も子もない。
海軍とその付置機関 SHOA の過失責任は重いけれど。

(2) 任期満了を目前に控える Michelle Bachelet 大統領。
Radio Cooperativa のインタビューで「初動に問題はなかった」と弁明したけれど、報道で見聞きする限りでは、迅速・的確な初動が実施されたとは思われなかった。
ONEMI(Oficina Nacional de Emergencia, Ministerio del Interior)などは行政組織に過ぎないのだから、早期に軍に命令を発するべきだったのでは?
軍隊は「自己完結性」を持つ実力組織。独自に、建設・輸送・通信・医療・給食・給水・発電などを行う能力を有する組織のはず。
元々国防相だったのに、なぜ? と思わないではいられなかった。
また大統領は情報の不足を嘆いたが、通信インフラの脆弱さを今になって嘆いて何になろう?

日本には「災害派遣」という実効的な制度がある。

自衛隊法 第83条  都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
2  防衛大臣又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。ただし、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。

はたと思ったが、おそらくチリには、このような法制度がないのだろう。

軍人は「国家を守る」のであって「国民を守る」のではない・・・といった思想もあるかもしれない。
チリは今年、独立200周年。その海軍も陸軍も、もうすぐ200周年を迎える。歴史と伝統が、「天災への対処は本来任務ではない・・・」という保守的な観念を醸成していても、おかしくはない。
軍に縁の深く、元々国防相だった大統領だからこそ、躊躇したのかもしれない。