地図蔵 ▷ 2012年までの記事「夏休みの憧憬」

夏休みの憧憬

(2009年7月27日)

小学生の娘と息子、夏休み満喫中。

70年代の終わり、私の小学生時代といえば『夏休みの友』とかいう、ドリルの塊みたいなのがあった。プール、剣道やラジオ体操といった記憶が、夏の強い陽射しと共に思い浮かぶ。そして、矢沢永吉の『時間よ止まれ』などの曲とリンクする。

当時、「チューリップ(Tulip)」というバンドがあった。『心の旅』、『青春の影』や『サボテンの花』といった曲が、よく知られている(40代以上の人には)。
わが子供心にとっては、これらの音楽、「ニューミュージック」が大人への憧憬だった。

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今日、所用で六本木へ行った折に乃木坂へ足を伸ばし、「よしだ屋珈琲店」にて一服。
この喫茶店のマスター「よしだ」さんは、「チューリップ」の結成メンバーだった方。眼鏡にヒゲで、小学生時代にレコードのジャケットで見た写真の印象そのまま。
けれど、かつてベースギターを弾くミュージシャンだったとは想像しにくい、物静かで寡黙な立ち居振る舞い。落ち着いた大人向けの店内には、「チューリップ」を偲ばせるものはまったくなかった。

30年の歳月が経って、憧憬と思い出を与えてくれたチューリップのメンバーだった人が、音楽の世界を去り喫茶店のマスターとして、目の前でコーヒーを淹れてくれる。
子を持ち中年になった自分が、それをいただく。
今さら昔のことをイロイロ訊ねたりするのは野暮で不粋だから、タバコをふかしつつ、美味しいコーヒーをただ黙って飲む。
時間よ止まれ、とは刹那的なもんだ。
『ごちそうさまでした』とだけ御礼を言って、店を出た。
夏の強い陽射しが、我が身に容赦なく照りつける。
今朝、ユンケルを飲むのを忘れたことを思い出した。月曜のサラリーマンは、かったるい。