地図蔵 ▷ 2012年までの記事「Quadrature of a Circle」

Quadrature of a Circle

(2005年4月12日)

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★ 長崎大医学部の研究グループが、言葉を話せない赤ちゃんが抱く喜びや悲しみなどの感情を、顔の表情や声などからリアルタイムで読み取る技術の開発に着手したそうです。将来的には、表情などを瞬時に言葉に置き換える“表情翻訳機”をつくり、各家庭で育児に活用してもらう計画だと。

★ 私の娘が生まれたとき、初老の産科医師が教えてくれた言葉が印象に残っています。「……赤ちゃんというのはね、まだまだ謎ばかり、解らないことばかりなんだよ。不思議なものでねぇ」。
★ 人間を最大限分析しようというのは、医学や科学の使命であるのかもしれません。長崎大いわく、「言葉を体得する前の乳児が感情を周囲に理解してもらえないとコミュニケーション能力が育たず、成育後に暴力に訴えるようになる」、「言葉を介さない母子間の意思疎通が重要と判断した」。
★ 人間を医学や科学によって100パーセント解析することは不可能であろうと思います。にんげんを、すべてバラバラに解析できると考えるのは驕りではなかろうか、少しばかりの「含み」を残しているほうが、人間は健全でいられるんじゃないか……そんなふうに思いました。いきすぎてはいけないような気がします。母子のメンタルな関係に機械・技術を介在させる必要がどこにありましょう?

★ ……球体は最高のかたち。しかし同時に、Quadrature of a Circle(円の求積)という、究極的に難解な要素を包含する、謎のあるかたち。それを完全に、ばらばらに分析することは不可能。円周率やπという、どうにもしようのないグレーゾーンがあり、99.9パーセントまで解析できても、残り0.1パーセントは謎として残ります。しかしそれでも、はたして結果は、もっとも美しい、壊れにくい、完全なかたちをしています。