地図蔵 ▷ 2012年までの記事「ヴィオレッタ・パラの 「Gracias a la Vida」」

ヴィオレッタ・パラの 「Gracias a la Vida」

(2003年9月28日)

★ 9月21日にNHK-BS2で放送された「世紀を刻んだ歌3 人生よありがとう Gracias a la Vida ~南米 歌い継がれた命の讃歌~」は、非常にいい番組でした。事前にNHKのディレクター氏から頂いたメールでも、その番組の充実振りが感じられるものでしたが、実際に見てみると、昨今ありがちな表面的にすぎないドキュメンタリーではなく、南米あるいはチリの人々の、人生の別の部分というか、寂しさ、やるせなさ、人生の難しさを、音楽を通じて端的に、そして見事にスケッチしたプログラムでした。
★ ヴィオレッタの弟や、メルセデス・ソーサ、アジェンデ下院議長などから、名もなき市井の人々まで、登場する人物に共通するのは「うたごころ」でしょう。チリ(南米)の人々は、本当に歌と詩が好きなのだ、ということも再認識させられました。また、若いマリア・イネス・オチョアの、生命力溢れる強い声が、陰影(苦渋)のあるヴィオレッタの声を対比させ、ひときわ際立たせていたようにも思います。
★ ところで、ついメロディーとタイトルに気がとられてしまうのですが、歌詞を読むと、ヴィオレッタはまた詩人でもあることに気づきました。

Gracias a la vida que me ha dado tanto.
Me dio dos luceros que, cuando los abro,
perfecto distingo lo negro del blanco,
y en el alto cielo su fondo estrellado
y en las multitudes el hombre que yo amo. 

このように、この曲では、全編を通して韻を踏んでいます。"La vida" という女性名詞を、あとはひたすら男性名詞ないし母音オー(O)が受ける形となっています。これはやはり愛の自由詩ですね。
★ ヴィオレッタは第8州チジャン近郊で生まれています。Chillan といえば、世界に名だたる巨匠ピアニスト、クラウディオ・アラウ(Claudio Arrau)もここの出身。少し北の Parral では、パブロ・ネルーダを輩出しています。あの地域の牧歌的光景は、人に詩情・抒情を授けるのでしょうか。
★ しかし、照れ屋で恥ずかしがりやさんの多いチリの一般の人々に、カメラの前で歌ってもらうのは大変だったでしょうね。