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演技

(2003年4月 5日)

★ アントニオ・スカルメタ(Esteban Antonio Skármeta Branicic、1940年アントファガスタ生まれ、クロアチア系チリ人。小説家。代表作『イル・ポスティーノ』(95年映画化、イタリア)。
★ マッシモ・トロイージ扮するマリオが、フィリップ・ノワレ扮するパブロ・ネルーダに言われます。「詩は詩人のものだ。」マリオは受けて「詩は読む人のものだ。」この言葉は多くの示唆に富んでいるように思います。
★ 詩であれ小説であれ、書き手は、読み手の魂を揺さぶろうという意図と恣意により、言葉を駆使します。マッシモ・トロイージはこの映画を完成して間もなく逝去します。
★ 死には時間的経過という意味で2種類あるように考えます。「突然襲うもの」と「予め予想されるもの」。後の場合には、とりわけ人間の本質が表出するのではないでしょうか。
★ 松濤明という登山家の遭難事件では、有名な遺書があります。「全身凍って力なし…友を捨てるに忍びず死を決す…漸く腰まで硬直が来た…日暮れとともに凡て終わらん」。この遭難事件は、日本の登山史上、もっとも「立派な死に方」とさえ言われています。私はかつてこの点を雑誌に書いたのですが、はたして人間は「立派な死に様」を演じるものなのか ?
★ 人間は、日々の暮らしの中で、本性とは別のところで、社会性なり倫理性に則って、人物・人格を演じ続けています。人生というものは、その大部分が演技であるような気がします。